40代の離婚では、退職金の扱いが将来の生活を大きく左右します。
「まだ受け取っていないから関係ない」「財産分与に含まれないのでは?」と誤解されがちですが、実務では離婚時点での調整が極めて重要です。

1.40代離婚と退職金問題の現実
40代での離婚は、結婚生活が20年前後に及ぶケースも多く、夫婦の生活基盤そのものが長期間にわたって共有されてきた年代です。
そのため、退職金は単なる「会社から個人に支払われるお金」ではなく、婚姻期間中の協力によって形成された将来資金として問題になることが少なくありません。
特に、配偶者が正社員として長年勤務してきた一方で、もう一方が家事・育児・転勤への対応などを担ってきた場合、その貢献は目に見える収入には表れませんが、退職金の背景には確実に存在しています。
しかし現実には、退職金は「将来もらうお金」「今は手元にないお金」であるため、離婚協議の場では後回しにされがちです。
その結果、退職金について何も決めないまま離婚が成立してしまうというケースが非常に多く見られます。
いったん離婚が成立すると、「やはり退職金の話をしておけばよかった」「老後資金が足りないことに後から気づいた」と後悔しても、状況を覆すのは容易ではありません。
40代離婚では、この“取り返しのつかなさ”が大きなリスクになります。
2.退職金は財産分与に含まれるのか
結論から言うと、退職金はケースによって財産分与の対象になり得ます。
ただし「必ず半分」「一律に対象」と決まっているわけではなく、婚姻期間との関係や支給の見込みなどを踏まえて整理します。
退職金は、給与のように毎月入ってくるお金ではありませんが、長年の勤務の積み重ねによって形成される点で、夫婦の協力関係の延長線上にある財産と評価されることがあります。
退職金が財産分与の対象として問題になりやすい典型例
- 婚姻期間が長く、勤務年数の多くが婚姻期間と重なっている
- 会社に退職金規程があり、支給が現実的に見込まれる
- 定年が近い、または早期退職制度などで支給の可能性が高い
- 配偶者が家事・育児・転勤対応などで就労を支えてきた事情がある
ポイント:対象になるのは「婚姻期間に対応する部分」になりやすい
実務上よくある整理は、退職金の全額を機械的に分けるのではなく、婚姻期間に対応する割合をベースに調整する考え方です。
たとえば、勤務20年のうち婚姻期間が15年であれば、「15/20に相当する部分」を念頭に話し合いを進める、というイメージです。
「まだ退職していないから対象外」「退職金は本人のものだから関係ない」と決めつけてしまうと、離婚後に取り返しがつかなくなることがあります。
退職金は“決められる時に決めておくべき論点”です。
退職金を話し合いの俎上に乗せるために確認したい資料
退職金は金額が見えにくいため、まずは「制度があるか」「見込みがどの程度か」を把握するのが現実的です。
次のような資料が手元にあると整理が進みます。
- 就業規則・退職金規程(社内規程)
- 退職金の試算表(人事・総務で発行できる場合)
- 給与明細・源泉徴収票(勤続年数や雇用形態の確認)
- 企業年金・確定拠出年金(DC)の概要資料(ある場合)
次のセクションでは、まだ支給されていない退職金の扱い方を具体的に解説します。

3.まだ支給されていない退職金の扱い
40代で離婚する場合、退職金はほとんどのケースで「まだ支給されていない将来のお金」です。
そのため、「金額が確定していない」「本当に支給されるかわからない」という理由から、話し合い自体を避けてしまうことがあります。
しかし実務上、最もトラブルになりやすいのが、この“未支給退職金を何も決めないまま離婚してしまうケース”です。
離婚後に状況が変わっても、原則として「あとから請求する」ことは極めて困難になります。
未支給の退職金でも整理すべき理由
退職金は将来の話とはいえ、これまでの勤務の積み重ねによって形成されるものであり、40代離婚ではすでに相当部分が「出来上がっている財産」
と評価される余地があります。
にもかかわらず、離婚時に何も取り決めがなければ、その後いくら高額な退職金が支給されても、分与を求める法的根拠を失ってしまう可能性があります。
「もらっていないお金だから関係ない」「将来のことは将来考える」という判断は、40代離婚において最も後悔につながりやすい選択です。
実務でよく使われる3つの整理方法
未支給の退職金については、金額が確定していないことを前提に、次のような方法で取り決めを行うのが一般的です。
① 将来支給時精算型
退職金が実際に支給された時点で、あらかじめ決めた割合(例:◯%)を支払う方法。
② 上限・条件付き分与
「◯円を超えた部分のみ分与する」「定年退職の場合のみ対象とする」など、条件を付けてリスクを調整する方法。
③ 他財産での調整
退職金には触れず、現在ある預貯金や不動産を多めに分けることで将来分を事実上精算する方法。
口約束では意味がない理由
「もらえたら払うつもり」「そのときはちゃんと話す」といった合意は、離婚後にはほぼ意味を持ちません。
離婚が成立すると、連絡が取れなくなったり、再婚・転職・早期退職などで状況が変わることも珍しくありません。
そのため、未支給退職金については必ず書面で合意しておくことが不可欠です。
次のセクションでは、その書面化の方法について詳しく解説します。
40代離婚・退職金の不安は書面で解決できます
将来のトラブルを防ぐために、今の段階で整理しておきませんか。
※初回相談時に状況を整理し、最適な書面をご提案します。
4.40代ならではの注意点|退職金だけ見ていると失敗する
40代での離婚は、若い世代の離婚と異なり、「勢いでやり直せる」という段階を過ぎています。退職金の問題は、その象徴ともいえる論点です。
この年代では、退職金単体だけを切り取って判断すると失敗しやすいという特徴があります。なぜなら、40代の離婚は必ず「老後」「住まい」「子ども」「働き方」と密接に結びついているからです。
40代離婚で同時に考えるべき現実的な要素
- 住宅ローンが完済しておらず、売却や居住継続について判断が必要になる
- 子どもの高校・大学進学が目前、またはすでに進行している
- 離婚後の住居費や生活費が大きく変わる可能性がある
- 再就職や転職が思ったほど簡単に進まない場合がある
- 老後資金を準備できる期間が実質的に20年を切っている
こうした状況の中で、「退職金は将来の話だから」「今は揉めたくないから」と問題を先送りすると、離婚後に生活設計が一気に崩れるという事態になりかねません。
よくある判断ミス
実務上、40代離婚で特に多く見られるのが、次のような判断です。
- 目先の預貯金を優先し、退職金について一切触れずに離婚を成立させてしまう
- 「信頼しているから大丈夫」と考え、口約束だけで済ませてしまう
- 一刻も早く離婚したいという気持ちから、条件を詰めきらないまま合意してしまう
これらは離婚成立時には「楽な選択」に見えますが、数年後、あるいは十数年後になってから、取り返しのつかない後悔として表面化することがあります。
40代の離婚は「人生後半のスタート」です。退職金の取り決めを誤ると、老後資金、住居、生活のすべてに長期的な影響が及びます。
だからこそ、40代の離婚では感情だけで決めるのではなく、将来を見据えた条件整理と書面化が不可欠になります。次のセクションでは、その具体的な方法について解説します。
5.退職金の取り決めは「書面化」しなければ意味がない
退職金について話し合いができたとしても、それを書面に残さなければ実質的な意味はありません。離婚時には「約束した」「合意した」と思っていても、離婚後に状況や考えが変わることは珍しくないからです。
特に40代の離婚では、退職まで10年以上の期間が残っていることも多く、その間に転職、早期退職、再婚、病気など、想定外の出来事が起こる可能性があります。こうした変化があったとき、口約束では何も守れません。
離婚協議書で最低限押さえるべきポイント
退職金を離婚協議書に盛り込む場合には、単に「支払う」と書くだけでは不十分です。実務上は、次のような点まで具体的に定めます。
- 退職金が支給される前提条件(定年退職・自己都合退職など)
- 支給された場合の分与割合または金額の計算方法
- 支給を知った場合の通知義務の有無
- 支払期限と振込方法
- 支払われなかった場合の対応
これらを曖昧にしたままでは、いざ退職金が支給されたときに「そんな約束はしていない」と争いになるリスクが高くなります。
より確実にするなら「離婚給付契約公正証書」
将来の退職金を含めた取り決めをより確実に実行させたい場合には、離婚給付契約公正証書の作成が有効です。公正証書にしておくことで、支払いが履行されなかった場合に、裁判を経ずに強制執行を検討できる余地が生まれます。
40代離婚では「今は揉めていないが、将来が不安」というケースが多く、まさにこのような状況こそ、公正証書による備えが意味を持ちます。
離婚後に「やはり退職金を請求したい」と思っても、書面がなければ認められないことがほとんどです。退職金については、離婚前に、書面で、具体的に決めておく必要があります。
次のセクションでは、こうした離婚協議書や公正証書の作成について、行政書士がどのように関与できるのかを解説します。
6.40代離婚と退職金問題で行政書士ができること
離婚は感情の問題であると同時に、条件をどう整理し、どう残すかという実務の問題でもあります。特に40代の離婚では、退職金のように「将来に影響するお金」をどう扱うかで、離婚後の生活の安定度が大きく変わります。
行政書士は、離婚に伴う合意内容を、法的に意味のある書面として整える専門家です。争いを前提とするのではなく、話し合いで決まった内容を、後から否定されない形に仕上げる役割を担います。
行政書士が具体的にサポートできる内容
離婚協議書の作成
退職金の分与方法や支給条件を整理し、将来のトラブルを防ぐ文面にまとめます。
離婚給付契約公正証書の原案作成
公証役場で使用する原案を作成し、退職金を含む給付内容を明確にします。
条件整理・文言調整
「将来支給された場合」「一定条件を満たした場合」など、曖昧になりやすい部分を実務的に整理します。
40代離婚の相談では、「今は揉めていないが、このままで大丈夫か不安」「相手を信用しているが、万一の備えはしておきたい」という声が多く聞かれます。こうした段階こそ、行政書士が最も力を発揮できる場面です。
退職金の扱いを曖昧にしたまま離婚してしまうと、後から修正することは非常に難しくなります。40代という人生の節目だからこそ、今の段階で条件を整理し、安心して次の生活に進める形を整えておくことが重要です。
7.よくある質問
退職金は必ず財産分与になりますか?
いいえ。支給見込みや婚姻期間など条件により判断されます。
40代でも将来分の取り決めはできますか?
可能です。書面で合意しておくことが重要です。
公正証書にしないとダメですか?
必須ではありませんが、強い証拠力があります。
相手が退職金額を教えてくれません
想定額や代替案での調整を検討します。
後から請求できますか?
離婚後の請求は困難になるケースが多いです。
行政書士と弁護士の違いは?
行政書士は書面作成、弁護士は紛争対応が中心です。
全国対応していますか?
はい。オンラインで全国対応可能です。
40代離婚・退職金の不安は書面で解決できます
将来のトラブルを防ぐために、今の段階で整理しておきませんか。
※初回相談時に状況を整理し、最適な書面をご提案します。
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