離婚は人生の大きな転機であり、財産分与や子どもの養育費、面会交流など多くの重要な事項を決定します。これらの決定事項を明確に記録し、将来的なトラブルを防ぐためには、離婚協議書を公正証書として作成しておくことが非常に重要です。公正証書は、公証人と呼ばれる法律の専門家が作成する文書であり、公証人は文書の法的な確認をしてもらえるため法的な効力が高く、信頼性があります。しかし、公正証書を作成する手順は専門的であり、初めての方にはわかりにくいかもしれません。
この記事では、専門の行政書士が解説する、離婚協議書を公正証書にするための具体的な流れについて詳しくご紹介します。各ステップを分かりやすく説明し、必要な書類や手続きのポイントを押さえることで、スムーズに進められるようサポートします。
離婚協議書を公正証書にする流れ
1.離婚協議書の作成
公正証書を作成するには、公証人に記載する文書の案文を提出することが求められます。そのため、夫婦間で離婚や条件の合意がなければそもそも公正証書を作成することができませんので、注意が必要です。公証人は、弁護士のように代理人として相手方と交渉するなどはできませんので、公正証書は合意の上作成されるものであることの理解をしておきましょう。夫婦間で話し合う離婚条件は以下のとおりです。
- 離婚の合意事項
- 財産分与の内容(預金、不動産、株式などの詳細)
- 養育費や慰謝料に関する取り決め
- 面会交流に関する取り決め
- 年金分割
- 清算条項等
2.公証役場の選定
公証役場は全国どこでも利用可能ですが、通常は自宅から最も近い公証役場が選ばれることが多いです。また、公証役場を選ぶ際には、口コミや公共交通機関でのアクセスの良さなども判断基準として考慮すると良いでしょう。公証役場の場所は、日本公証人連合会のウェブサイトで探すことができます。
【大阪の公証役場】 梅田公証役場 |
3.公証役場への事前連絡
選んだ公証役場に電話で連絡し、公正証書作成の予約を取ります。予約の際には、氏名、作成したい公正証書の種類、希望する打ち合わせ日を伝えます。その際、必要書類や手続きの流れについても確認しておくと良いでしょう。なお、多くの公証役場は12時から13時の電話対応ができないケースが多いです。
4.必要書類の準備
問い合わせの際に聞いた書類等を準備します。主に必要となる物は次のとおりです。
- 夫婦両方の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 作成した離婚協議書
- 戸籍謄本
5.公証役場で打ち合わせ
公証人に対して、上記の書類を提出します。本人確認書類はコピーを取られた後、返却されます。打ち合わせでは、公証人から記載内容の意味などが確認されますので、適切に答える必要があります。
6.公正証書の原案確認
上記の打ち合わせ後1週間前後で公正証書の原稿がメールなどによって届きます。夫婦で内容に間違いが無いかを確認し、変更がなければ原稿を確定させる旨と作成する日を伝えましょう。
7.公正証書の作成
予約した日時に夫婦そろって公証役場に行きます。公証人が公正証書の内容を読み上げ、夫婦両方が内容を理解し同意していることを確認します。再度内容について確認し問題がなければ、夫婦両方が公正証書に署名・捺印します。押印には認印を使用しても問題ありませんが、双方が同じ印鑑を使用することはできません。また、本人確認書類として印鑑登録証明書を提出する際には、実印での押印が必要です。
公正証書の受け取りと費用の支払い
公正証書を作成した後、お金をもらう側は正本を、支払う側は謄本を受け取り、公証人手数料を支払います。公証人手数料は公正証書に記載する内容に応じて算定され、概ね50,000円前後で作成できるケースが多いように感じます。(公証人手数料はこちら)
離婚協議書を公正証書にする手続は以上です。続いて公正証書にするメリットを述べさせていただきます。
離婚協議書を公正証書にするメリット
公正証書にすることで、離婚協議書の内容に法的な強制力が付与され、将来的なトラブルを防ぐことができます。下記では公正証書にすることで得られる具体的なメリットについて紹介します。
執行力の付与
公正証書は、金銭の支払債務については、裁判所の判決と同等の効力を持ちます。そのため、万一、債務者がお金を約束の期日までに支払わない場合には、裁判による判決を得ずに強制執行の手続が可能です。
内容の明確化と誤解の防止
公正証書は、公証人が内容を確認し、法的に適切な表現に修正します。曖昧な表現や解釈の余地がある部分を明確にし、将来的な紛争を予防することができます。
証拠力の向上
公正証書は、公証人によって作成され原本が役場に保管されるので、高い証拠能力を持ちます。これにより将来、何らかの争いが生じた場合に、公正証書を有力な証拠として提出することができます。
心理的効果
公的機関を関与させて書面を作成することで、当事者双方が、合意内容の重要性を再認識します。これにより約束を守る意識が高まり、履行の可能性が向上します。さらに、公的機関で手続きを経ることで、離婚という人生の大きな決断に対する精神的な区切りをつけやすくなります。
離婚協議書の作成を円滑にするには
前述の通り、公正証書を作成するためには、夫婦間の同意が必要です。この同意がなければ、公正証書を作成することはもちろん、離婚協議書を作成することもできません。ここでは、離婚協議書を作成する際の効果的で建設的な話し合いの方法について紹介します。この過程は感情的になりやすいですが、冷静さを保ちながら進めることが重要です。
準備段階
まずは、話し合いの日時と場所を決めましょう。時間は1時間程を確保して、ゆっくり話せるようにしましょう。ただし、話し合いを効率よく進めるために、あらかじめ話すべき事項(財産分与、養育費、親権など)のリストを作成しておくことが重要です。また、話し合いに必要な財産状況、収入証明、子どもの学費などが分かる資料も準備しておくとよいでしょう。
話し合いの基本
日常の会話とは異なり、このような特別な話し合いでは、以下の点を意識するとより効果的な話し合いができます。
・互いの意見を尊重し、傾聴する姿勢を持つ。
・感情的にならず、冷静に話し合いをする。
・過去に起こった問題(浮気や不倫)ではなく、将来の解決策に焦点を当てる。
・必要に応じて休憩を取る
離婚条件の合意するために意識しておくこと
話し合いの環境だけを整えても、肝心の合意ができなければ意味がありません。合意をするための方法についても下記に記載します。
互いに利点のある解決策を探る
話し合いの際には、両者が納得できるような解決策を見つけることが重要です。相手の立場や要求を理解し、それに応じた提案を行うことで、双方にとって有益な結果を得られる可能性が高まるでしょう。
譲歩と妥協も重要
協議において、一方が全てを要望を譲るのではなく、お互いに少しずつ譲歩し合い、妥協点を見つけることが重要です。これにより、双方が納得できる解決策を見つけやすくなります。例えば、妻は家を貰う代わりに預金は一切請求しないというような取り決めをするなどが考えられます。
段階的に合意を積み重ねる
一度の話し合いですべての問題を解決しようとするのは難しいことがあります。まずは主要な点から話し合って、互いに合意し、その後に詳細な部分を詰めていくとよいでしょう。例えば、財産分与の金額からではなくどのような財産を分与の対象とするのかという取り決めを先にしておくことが考えられます。
このように話し合いで合意した内容は必ず文書に残しておきましょう。片方だけがメモを取ると後で、言った言っていないと揉める可能性があります。そのため、メモは2枚作成し、双方で保管しておくようにしましょう。
離婚協議書を公正証書にする流れは?ーよくある質問
Q.離婚協議書を公正証書にする理由は?
公正証書にすることで、離婚協議書の内容が法的に強化されます。公正証書は、公証人が作成する公式な文書で、内容に対する証明力が強く、万が一、金銭的な支払の約束が守られない場合には、強制執行を求めることが可能です。
Q.公正証書にするためにはどのような手続きが必要ですか?
まず、離婚協議書を作成し、双方が合意する必要があります。その後、公証役場に行き、公証人に対して作成し署名等をした協議書を提出します。公証人が協議書の内容を確認し、問題がなければ公正証書として作成されます。なお、協議書に記載していても公正証書の内容として作成できない場合がありますので、注意が必要です。
Q.公証役場で必要な書類は何ですか?
公証役場に提出する書類には、離婚協議書、双方の本人確認書類(運転免許証やパスポトなど)、戸籍謄本が必要です。記載する内容によって追加で提出を要する書類もあります。
Q.公正証書作成の費用はどのくらいですか?
公正証書の作成には手数料がかかります。手数料の額は協議書に記載する内容により異なりますが、一般的には5万円前後です。詳細な費用については、利用する公証役場に直接確認することをお勧めします。
Q.公正証書の作成にはどれくらいの時間がかかりますか?
公正証書の作成には通常、1か月程度かかることが多いですが、内容や公証人のスケジュルによって変わる可能性があります。事前に公証役場で所要時間を確認するのが良いでしょう。
Q.公正証書にした場合、後から内容を変更することはできますか?
可能です。公正証書の内容を変更するには、新しく協議書を作成し、公証役場で再度公正証書として作成する必要があります。変更内容によっては、元の公正証書を取り消す手続きが必要となる場合があります。
離婚協議書や公正証書作成のご相談は
無料サンプルなどを使用して離婚協議書や公正証書の原稿を作成することは、コストや時間の節約になる可能性がありますが、自分のケースに変更しなければ適切な文書として作成できないなどデメリットが存在します。特に離婚条件が複雑な場合や財産が多い場合には専門家のアドバイスを受けながら作成することをお勧めします。
当事務所では、離婚協議書の作成を専門に取り扱っており、各ご家庭の状況やニーズに応じた最適な協議書を作成するお手伝いをしております。ご不明点や下記のようなお悩みをお抱えの方は、ぜひご相談ください。
- 夫婦で協議離婚を希望している
- 財産分与の対象財産が多く複雑な場合
- 未成年の子どもがいる場合
- 離婚後の生活や住居の決め事を明確にしたい
- 慰謝料の支払いがある場合
- 年金分割を合意している場合
- 債務の分担がある場合
- 離婚後のトラブルを防ぎたい場合
以下に、当事務所の離婚協議書作成サービスの特徴と流れをご紹介いたします。
サービスの特徴
豊富な経験
当事務所では、これまでに多数の離婚協議書や公正証書の作成をサポートさせていただきました。ネット上の口コミ数は150件を超えており、総合評価が4.9/5と高く評価をいただいております。そのため、当事務所によって提供させていただくサービスは自信を持っております。
きめ細やかな対応
ご依頼者様のご状況に合わせた、離婚協議書や公正証書を作成いたします。これまでに、ネット上のサンプルやテンプレートでは対応できないような難易度の高い離婚協議書や公正証書の作成も対応させていただいた実績があります。
柔軟な相談や業務の対応
対面、電話、オンラインなど、お客様のご都合に合わせた相談方法をご用意しております。さらに、当事務所では離婚協議書の作成に加え、公正証書の作成も取り扱っております。公正証書の作成については、全国的に対応しています。
明確な料金体系
事前にお客様のご状況をヒアリングした上で、サービス内容と料金の詳細をお伝えしますので、料金体系は明瞭にさせていただいております。
全国対応
当事務所は大阪市に事務所がありますが、離婚協議書や公正証書の作成については、大阪府、兵庫県、奈良県を中心に全国からご依頼を承っております。これまでに、東京都や神奈川県、広島県、沖縄県など幅広くご依頼を承ってまいりました。
離婚協議書作成の流れ
1.初回相談
まずは、電話や問い合わせフォームよりご連絡ください。お客様の状況をヒアリングし、離婚協議書作成の記載内容などをお伺いし、御見積やご準備いただく書類等をお伝えいたします。
2.契約締結
上記1によってご依頼いただいた内容で契約締結をします。お支払は契約締結後5日以内とさせていただいております。
3.協議書の草案作成
離婚協議書、公正証書いずれのご依頼であっても、まずは協議書の草案をPDF等のファイルでご確認いただきます。お送りする協議書の草案をご夫婦でご確認ください。
4.協議書の修正等
作成した草案の内容について必要に応じて変更や修正をいたします。その際に、不明点や疑問点があればお気軽にお申し付けください。
5.協議書の製本と郵送
確定いただいた協議書を当事務所で製本し、郵送させていただきます。なお、公正証書とする場合には公証役場にて手続をいたします。
料金
サービス | 料金 | 概要 |
離婚協議書の作成と製本 | 40,000円 | 離婚協議書を作成し、製本までを対応させていただきます。 |
離婚公正証書の作成サポート | 60,000円~ | 離婚公正証書の作成をサポートさせていただきます。代理調印が必要かなのかどうかで費用が異なります。 |
※)上記金額に実費がかかります。
当事務所にお任せいただくメリット
安心と安全をご提供します
法的知識と豊富な経験に基づいた、安全で信頼性の高い協議書を作成いたします。
時間の節約
煩雑な離婚協議書の作成を当事務所にご依頼いただくことで、お客様の貴重な時間を節約できます。
トラブル予防
将来起こり得るトラブルを第三者からの視点で予測し、それを防ぐための条項を検討させていただきます。
専門的アドバイス
離婚に関する法的な疑問や離婚後の手続なども専門家の立場からアドバイスいたします。
お問い合わせ
離婚協議書の作成について、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。経験豊富な行政書士が、お客様の状況に寄り添いながら、最適な離婚協議書や公正証書の作成をサポートいたします。
お客様の声
お客様からいただいたお声の一部はこちらをご確認ください。
離婚協議書を公正証書にする流れは?ーまとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。こちらの記事では、離婚協議書を公正証書にする流れや、公正証書とするメリットや費用について、さらに離婚による協議を円滑にする方法など次の内容について詳しく述べさせていただきました。
- 離婚協議書を公正証書にする流れ
- 1.離婚協議書の作成
- 2.公証役場の選定
- 3.公証役場への事前連絡
- 4.必要書類の準備
- 5.公証役場で打ち合わせ
- 6.公正証書の原案確認
- 7.公正証書の作成
- 公正証書の受け取りと費用の支払い
- 離婚協議書を公正証書にするメリット
- 執行力の付与
- 内容の明確化と誤解の防止
- 証拠力の向上
- 心理的効果
- 離婚協議書の作成を円滑にするには
- 離婚条件の合意するために意識しておくこと
- 互いに利点のある解決策を探る
- 譲歩と妥協も重要
- 段階的に合意を積み重ねる
- 離婚協議書を公正証書にする流れは?ーよくある質問
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