熟年離婚を考えるとき、真っ先に不安になるのがお金の問題ではないでしょうか。長年にわたり夫婦で家計をやりくりしてきた場合、自分自身が自由に使えるお金がほとんどないと感じる方も少なくありません。
また、離婚後の生活費や住まいなど現実的な課題を前に、「お金がないから離婚を踏み切れない」と悩むケースも多いようです。
本記事では、「熟年離婚をしたいけれどお金がない」という状況に焦点を当て、離婚後の生活資金を確保する方法や、離婚にかかる費用を抑える工夫について離婚専門の行政書士の視点から解説します。
熟年離婚で高まるお金の不安
熟年離婚では若い世代の離婚と比べ、お金に関する不安が大きくなりがちです。主な理由は、長年夫婦生活を送ったことで経済的基盤が夫婦単位に最適化されており、離婚によって突然それが分かれるためです。このトピックでは、熟年離婚に際して直面しやすい金銭面の不安要素について見ていきます。
離婚後に増える生活費の負担
長年一緒に生活していた夫婦が離婚すると、それまで一つで済んでいた生活費が二重にかかるようになります。例えば、住居費や光熱費は夫婦二人で暮らしていれば一世帯分で済んでいたものが、離婚後はそれぞれが別々に負担しなければなりません。
高齢になってから新たに賃貸住宅を借りる場合、保証人の問題や収入証明の点で苦労するケースもあります。また、単身で生活する方が相対的に割高になる費用も多く、離婚後の生活費が想像以上に増えてしまう可能性があります。
このように、熟年離婚後は生活コストが上昇しやすいため、お金の不安が高まるのです。また、年齢を重ねると節約にも限界があり、突然の出費(家電の故障や医療費など)にも備えなければならないため、余裕をもった生活資金が必要です。
収入源が限られる不安
熟年離婚を考える世代では、定年退職や雇用契約の終了が迫っていたり、既に退職して年金生活に入っていたりする場合も少なくありません。特に専業主婦(主夫)として長年家庭を支えてきた方にとっては、離婚後に新たな収入源を確保するのは容易ではないでしょう。
特に50代以降で再就職先を見つけることは難しく、仮に見つかっても十分な収入を得られないことも多いのが現実です。一方、現役で働いている場合でも、離婚によって収入の柱であった配偶者の給与や年金を失えば、経済的に大きな痛手となります。
こうした収入面の不安から、「お金がないから離婚後の生活が成り立たないのでは」と心配する方が増えています。
老後資金と将来の医療費への懸念
熟年離婚は老後の生活設計に直結するため、将来の医療費や介護費、老後資金への懸念も大きな不安要素です。歳を重ねるにつれて医療費の負担は増え、要介護状態になれば介護費用もかかります。
夫婦で協力して老後資金を蓄えてきた場合、離婚によって蓄えを分け合うことで一人あたりの老後資金が目減りしてしまいます。また、配偶者の社会保険の扶養から外れることで健康保険料の負担が増えることや、年金受給額が単身分となることで手取り額が減る場合もあります。
平均寿命が延びている現代では、60代で離婚すればその後20〜30年もの長い期間を一人で生活費を賄う可能性もあり、十分な備えが求められます。このように、熟年離婚では単に現在の生活費だけでなく、将来にわたる医療・介護費や老後資金への不安が高まるのです。
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熟年離婚で確保すべきお金の種類
「お金がない」と感じていても、熟年離婚では適切な手続きを踏めば一定の資金や収入源を確保できる可能性があります。主に押さえておきたいのは、夫婦が築いた財産の分配(財産分与)と、公的年金の分割、そして状況によっては慰謝料や婚姻費用といった金銭です。このトピックでは、離婚時に確保し得るお金の種類とそのポイントについて説明します。
財産分与で得られる資金
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚に際して公平に分配することです(原則として夫婦それぞれ2分の1ずつが目安)。熟年離婚の場合、結婚期間が長いため財産分与で扱う資産も多岐にわたります。
預貯金や不動産、自動車、さらには退職金や生命保険の解約返戻金なども含め、婚姻中に形成された財産は原則として全て対象になります。
夫婦の資産状況を正確に洗い出し、漏れなくリストアップすることが重要です。特に退職金は将来受け取る予定のものも含めて財産分与の対象とすることが可能です。財産分与の結果、まとまった金額を得られれば、離婚後の生活立て直しに大きく役立ちます。
また、配偶者に比べて著しく収入が低い場合には、通常の按分以上に多めの財産分与を受けるよう求める(扶養的財産分与)ことも検討されます。例えば、高齢で無収入の配偶者が自立困難な場合には、財産分与で通常より多い割合(6割以上など)を受け取る合意がなされることもあります。
財産分与によってどれくらいの金額が自分に配分されるのかを把握することは、熟年離婚後の生活設計を描く上で極めて重要です。
年金分割による老後の収入確保
公的年金のうち厚生年金については、離婚時に年金分割制度を利用して相手の年金記録の一部を自分のものに移すことができます。専業主婦(主夫)で自身の年金受給額が少ない場合でも、婚姻期間中に配偶者が納めた厚生年金保険料記録を按分して自分の将来の年金受給額に反映させることが可能です。
これにより、離婚後も一定の年金収入を確保できます。ただし、年金分割で受け取れる年金額は、思っているよりも少額にとどまるケースもあります。一般的なサラリーマン家庭の場合、年金分割によって妻が受け取れる厚生年金額は月に数万円程度となり、単独で生活費の全てを賄えるほどではないことも多いのです。
そのため、年金分割はあくまで老後の収入の一部と捉え、不足分を預貯金や財産分与で補う視点が必要になります。年金分割の手続きには離婚後2年以内(令和7年5月現在)という期限があるため、忘れずに申請しましょう。(この期限を過ぎると年金分割ができなくなるので要注意です。)
なお、2008年4月以降の婚姻期間については、専業主婦(第3号被保険者)の場合、配偶者の同意がなくても自身の請求で年金記録の半分を取得できる「3号分割」という制度もあります。
慰謝料や婚姻費用分担などその他の金銭
熟年離婚に至る原因によっては、慰謝料を受け取れる場合もあります。例えば配偶者の不貞行為やDVが理由で離婚する場合、精神的苦痛に対する慰謝料を請求でき、それがお金の足しになることもあります。ただし、慰謝料は離婚原因が法的に認められる場合に限られますので、誰もがもらえるものではありません。
また、離婚前の別居期間中に収入のない側が生活に困窮している場合には、離婚成立までの間、収入がある配偶者に婚姻費用の分担を求めることが可能です。婚姻費用分担請求を行えば、別居中でも一定の生活費を受け取れるため、離婚前にお金がない状態を緩和できます。これらの制度も活用しながら、離婚後に手元に残るお金を最大限確保することが大切です。
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離婚手続きにかかる費用と節約のポイント
熟年離婚を考える際、「離婚するにもお金がかかるのでは?」という心配もあるでしょう。実際、離婚そのものには役所への離婚届提出に費用はかかりませんが、円満に離婚するための話し合いや契約書作成、調停・裁判になった場合の費用など、周辺にかかる費用は存在します。
お金がない中で離婚を進めるには、これらの費用を抑える工夫が必要です。このトピックでは、離婚手続きに関連する費用と節約のポイントについて解説します。
協議離婚と裁判離婚の費用差
日本の離婚の約9割は協議離婚(夫婦の話し合いによる離婚)と言われます。協議離婚であれば、基本的に離婚届を提出するだけなので公的な手数料はかかりません。ただし、話し合いがまとまらず家庭裁判所の調停や裁判に進むと、申立てのための手数料や弁護士費用などが発生します。
調停申立てには収入印紙代や郵便切手代といった数千円程度の費用がかかり、裁判になるとさらに費用と時間が嵩みます。弁護士に依頼すれば着手金や報酬が必要となり、その額はケースにもよりますが数10万円単位になることも珍しくありません。お金がない状況で離婚問題を長引かせてしまうと、経済的負担が一層重くなる恐れがあります。そのため、可能な限り協議離婚で早期に合意を成立させることが費用面でも望ましいと言えます。
離婚協議書・公正証書作成のコスト
協議離婚であっても、離婚後のトラブルを防ぐために離婚協議書を作成し、公正証書化しておくことが理想的です。離婚協議書は自身でも作成できますが、法律的に有効で漏れのない内容にするには専門知識が必要です。
行政書士などに書類作成を依頼する場合、その報酬として5万円から8万円程度の費用がかかります。また、公証役場で公正証書にする際には公証人手数料も必要ですが、金銭の支払いを伴う内容であれば多くの場合5,6万円程度(取り決め金額によって変動)の手数料で作成可能です。これらの費用は発生しますが、公正証書にしておけば将来の支払いトラブルに対処できる安心を得られるため、必要な投資と言えるでしょう。
逆に、書類作成を省略したり曖昧な口約束で済ませてしまうと、後々紛争になった場合に余計な出費(裁判費用等)につながりかねません。適切な書類を整えることは、結果的に費用の節約にもなります。
公的支援や無料相談の活用
どうしても離婚費用の捻出が難しい場合には、公的な支援制度や無料相談窓口を活用することも検討しましょう。各市区町村には離婚や生活資金に関する相談を受け付ける福祉窓口や法律相談窓口があります。
また、法テラスでは一定の所得以下の場合に弁護士費用の立替え支援や無料法律相談を行っています。高齢で収入がない方でも、公的年金のみの場合は法テラスの資力要件を満たすことがあり、費用面の心配を軽減できるでしょう。ただし、法テラスを利用する場合でも最終的には立替費用を返済する必要がありますので、利用にあたっては計画を立てることが大切です。
さらに、親族や友人から一時的に援助を受けられるなら無理のない範囲で協力を仰ぐのも一つの方法です。経済的な理由だけで離婚を諦めず、利用できる制度や周囲のサポートを積極的に検討しましょう。なお、離婚後に収入や貯蓄が不足する場合は、生活保護など公的扶助を受けられる可能性もあります。経済的に行き詰まった際には無理をせず、行政の福祉サービスに相談することも検討しましょう。
行政書士のサポートで経済的不安を解消
お金の不安を抱えながら熟年離婚に踏み切るのは勇気が要りますが、専門家のサポートを受けることで経済面の不安を大きく減らすことができます。行政書士などの専門家に相談し、離婚協議書や離婚給付契約公正証書の作成を依頼すれば、金銭に関わる取り決めを漏れなく文書化でき、離婚後の金銭トラブルも防止できます。このトピックでは、行政書士によるサポートの具体的なメリットと、全国対応サービスについて紹介します。
行政書士による離婚協議書の作成サポート
行政書士は離婚に関する契約書類の作成を含めた書類作成の専門家です。お金がない状態であっても、行政書士に離婚協議書の作成を依頼することは、離婚後に確実に受け取れるお金を確保するための投資と言えます。
夫婦間の合意内容、とりわけ財産分与や年金分割、慰謝料など金銭に関する取り決め事項を法律的に有効な文章にまとめてもらうことで、自分にとって不利な抜け漏れを防げます。
行政書士は依頼者の経済状況や要望を丁寧に聞き取り、公平かつ実現可能な内容の離婚協議書を作成します。離婚協議書があれば、離婚後に相手から約束のお金が支払われないといった事態にも毅然と対処できるため、経済的な安心感が得られるでしょう。費用面でも、行政書士への依頼報酬は訴訟に比べれば低額で済むことが多く、金銭的負担を抑えつつ専門的なサポートを受けられます。
離婚給付契約公正証書で支払いを確実に
離婚協議書で取り決めた財産分与の支払い方法や年金分割に伴う将来の給付については、公正証書にしておくことで一層の確実性が得られます。行政書士は離婚給付契約公正証書の作成支援も行っており、公証人と連携して金銭の支払いに強制執行力を持たせる書類を作成することが可能です。
公正証書化しておけば、万が一相手が支払いを怠った場合でも速やかに法的措置を取ることができ、取り決めたお金を確保できます。特に熟年離婚では将来の年金受給や長期にわたる分割払いが絡む場合もあるため、公正証書によって担保を確保しておくことが安心につながります。
行政書士に依頼すれば、公証役場との打ち合わせ日程の調整や必要書類の準備なども任せることができ、自分で動く手間を最小限にしながら確実な書類作成が可能です。
全国対応の相談サービスで安心
熟年離婚のお金の悩みは、日本全国どこにお住まいでも共通の問題です。ほとんどの行政書士事務所では、電話やメール、オンラインなどでの相談に対応し、全国どこからでも依頼できる体制を整えているところがあります。
遠方に住んでいて近くに専門家がいない場合でも、メールや郵送を活用して書類のやり取りができるため、地理的なハンデなく専門家の支援を受けられます。経験豊富な行政書士に依頼することで、財産分与で何をどれだけ受け取れるか、年金分割の手続き方法、離婚協議書に盛り込むべきポイントなど、金銭面の不安を一つ一つ解消していくことができます。
経済的な問題で離婚を諦める前に、ぜひ全国対応の専門家サービスを活用してみてください。適切なサポートを受けることで、限られたお金の中でも安心して新たなスタートを切ることができるでしょう。
熟年離婚による協議書や公正証書の作成はお任せください
熟年離婚では、生活費・年金・財産分与など、将来にわたって影響する金銭的な取り決めが必要になります。しかし、内容が不明確なまま離婚してしまうと、離婚後に「約束と違う」「支払ってもらえない」といった新たなトラブルを招くことも少なくありません。
当事務所では、熟年離婚に特化した離婚協議書や離婚給付契約公正証書の作成を、全国対応でサポートしております。特に、以下のようなお悩みがある方は、ぜひご相談ください。
- お金がないけれど離婚したい
- 財産分与や年金分割の内容を確実に書面化したい
- 慰謝料や婚姻費用について、相手ときちんと取り決めたい
- 離婚後の生活資金が心配で、支払いを確実に受け取れる方法を知りたい
- 公正証書で強制執行できる内容にしておきたい
離婚協議書の作成は、将来の金銭トラブルを防ぐ「備え」として極めて有効です。ご自身だけで悩まずに、専門家の知識と経験を活用し、経済的な不安を少しでも軽減させましょう。まずはお気軽にご相談ください。あなたの新しい一歩を、確かな書面でサポートいたします。
サービスの特徴
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ご依頼者様のご状況に合わせた、離婚協議書や公正証書を作成いたします。これまでに、ネット上のサンプルやテンプレートでは対応できないような難易度の高い離婚協議書や公正証書の作成も対応させていただいた実績があります。 - 柔軟な相談や業務の対応
対面、電話、オンラインなど、お客様のご都合に合わせた相談方法をご用意しております。さらに、当事務所では離婚協議書の作成に加え、公正証書の作成も取り扱っております。公正証書の作成については、全国的に対応しています。 - 明確な料金体系
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当事務所は大阪市に事務所がありますが、離婚協議書や公正証書の作成については、大阪府、兵庫県、奈良県を中心に全国からご依頼を承っております。これまでに、東京都や神奈川県、広島県、沖縄県など幅広くご依頼を承ってまいりました。
離婚協議書作成の流れ
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まずは、電話や問い合わせフォームよりご連絡ください。お客様の状況をヒアリングし、離婚協議書作成の記載内容などをお伺いし、御見積やご準備いただく書類等をお伝えいたします。 - 契約締結
上記1によってご依頼いただいた内容で契約締結をします。お支払は契約締結後5日以内とさせていただいております。 - 協議書の草案作成
離婚協議書、公正証書いずれのご依頼であっても、まずは協議書の草案をPDF等のファイルでご確認いただきます。お送りする協議書の草案をご夫婦でご確認ください。 - 協議書の修正等
作成した草案の内容について必要に応じて変更や修正をいたします。その際に、不明点や疑問点があればお気軽にお申し付けください。 - 協議書の製本と郵送
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