長年連れ添った夫婦でも、性格の不一致によって熟年離婚を考えるケースは少なくありません。なお、熟年離婚とは明確な定義があるわけではありませんが、一般的に結婚生活が20年以上経過した夫婦の離婚を指すことが多いと言われます。
子どもの独立や夫の定年退職をきっかけに、夫婦の価値観のズレや積もり積もった不満が一気に表面化することがあります。「今さら離婚なんて」と戸惑うかもしれませんが、人生の後半をより充実したものにするために離婚を選択する方も増えています。
「長年我慢してきたけれど、このまま夫と老後を過ごす自信がない」そんな思いを抱く方も多いのではないでしょうか。近年は女性の社会進出や価値観の変化により、長年我慢を重ねるより自分らしい人生をやり直したいと考える人が増えているとも言えるでしょう。
実際、離婚全体に占める50代以上の夫婦の離婚割合は2割を超えており(1980年頃には1割程度でしたが、近年では約2倍に増加しています)、晩年の離婚は決して珍しいことではなくなっています。
本記事では、性格の不一致を原因とする熟年離婚について、その背景や注意点、そして円満に離婚するための準備と手続きまで、全国対応の行政書士の立場からわかりやすく解説します。
性格の不一致が熟年離婚を招く背景
夫婦の性格や価値観の違いは誰にでもあるものですが、熟年期になるとそれまで見過ごしてきた溝が決定的になることもあります。現役世代の頃は子育てや仕事に追われ、多少の不満は我慢してきた夫婦でも、人生の節目を迎えて時間や心に余裕が生まれると、かえって積年のズレが浮き彫りになることがあります。
実際、家庭裁判所の離婚調停における申立て理由でも「性格の不一致」は常に上位に挙げられており、夫婦間の根本的な価値観の違いが離婚を招くケースは非常に多いといえます。その背景にはどのような事情があるのでしょうか。ここでは熟年離婚に至りやすい性格の不一致の具体例を見てみましょう。
役割分担や生活観のズレ
仕事や家事、子育てに対する価値観の違いからくる不満が蓄積していることがあります。例えば、夫が家庭のことを何でも「妻任せ」にし続けた結果、妻は長年にわたり家事育児の負担を一人で背負い、不公平感を募らせている場合などです。
実際、日本では家事・育児の多くを妻が担っている家庭が少なくなく、そうした偏りが長年の不満につながるケースも見られます。お互いの役割に対する考え方が噛み合わず、感謝の言葉もないまま過ごしてきたことで、いつしか尊重し合う気持ちが薄れてしまうこともあります。定年後に夫が急に家庭に関わろうとしてもうまく折り合えず、衝突が増えるといったケースもあるでしょう。
お金に関する考え方の違い
収入や支出の管理、老後資金の使い道など、お金に関する夫婦の考え方のズレも性格の不一致として現れます。妻に十分な生活費を渡さない夫への不満や、趣味・交際費に対する金銭感覚の違いが大きな溝になるケースも少なくありません。
例えば「老後のために貯蓄したい妻」と「今を楽しむために使いたい夫」のように将来設計の方向性が噛み合わない場合、長年我慢してきた不満が限界に達し、経済的な不公平さへの怒りが熟年離婚の引き金となることがあります。
コミュニケーション不足と心のすれ違い
一緒に過ごす年月が長くなるほど、会話やコミュニケーションが減り、夫婦がお互いを「いて当たり前」の存在と感じてしまいがちです。「夫が自分の話を全く聞いてくれない」「感謝や労いの言葉がない」といった不満が積み重なり、妻が家庭内で孤立してしまう場合があります。
その結果、精神的な孤独感が深まり、ついには離婚を決意するに至ることも少なくありません。長年のすれ違いにより夫婦間の会話がなくなってしまうと、相手への関心や尊重も薄れ、関係修復が難しくなってしまいます。
以上のように、長年かけて蓄積した不満やズレが「性格の不一致」という形で表面化し、熟年離婚の大きな原因となっているのです。
性格の不一致による熟年離婚を決意する前の熟考
なお、性格の不一致は法律上の明確な離婚原因とはされていないため、夫婦の一方が離婚に同意しない場合には直ちに離婚が成立しない可能性があります。その際は家庭裁判所での調停や審判といった法的手段が必要になりますが、時間と労力がかかるため、できる限り冷静な話し合いで合意による解決を目指すことが望ましいでしょう。
性格の不一致が原因とはいえ、熟年離婚は人生の大きな転機です。感情のままに離婚へ突き進む前に、いくつか確認しておきたいポイントがあります。長年連れ添った相手との決別には期待だけでなく不安もつきものです。後悔しない選択をするためにも、以下の点について一度立ち止まって考えてみましょう。
離婚後の生活イメージ
離婚すれば長年連れ添ったパートナーと離れることになります。その後の生活を具体的にイメージできているでしょうか。経済的な面だけでなく、精神的な支えや日常の家事負担など、独り身になったときの生活の変化を想定することが大切です。
一人暮らしの孤独感や、家事全般を自分で担う大変さに対する覚悟も必要です。また、自分や配偶者が将来介護が必要になった場合に備え、頼れる制度や親族はいるかなど、老後の生活設計も視野に入れておきましょう。
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家族や周囲への影響
お子さんがいる場合、たとえ成人していても親の離婚は少なからずショックを与えるものです。離婚の理由が「性格の不一致」であっても、子どもにどう説明し、理解を得るかを考えておきましょう。
できれば夫婦そろって子どもに話し、双方の思いを伝える機会を持つことが望ましいです。また、長年親しくしてきた親戚・友人への報告や人間関係の変化も生じます。これまで夫婦単位で付き合ってきた友人知人との関係性が変わる可能性もありますので、周囲への説明やサポートについて事前に整理しておくことで、離婚後の精神的負担を軽減できるでしょう。
本当に離婚以外に解決策はないか
熟年離婚に踏み切った後で「やっぱり別れなければ良かった」と悔やむ人もいます。離婚以外に夫婦関係を改善する方法が残されていないか、一度冷静に見つめ直すことも大切です。
例えば、一時的に別居してお互い頭を冷やしてみる、夫婦でカウンセリングや第三者を交えた話し合いを行ってみるといった選択肢も考えられます。それでも心のわだかまりが解消せず、「自分らしい人生を取り戻すには離婚しかない」と確信できたときに、離婚の手続きを進めるようにしましょう。衝動や勢いではなく、納得して下した決断であることが重要です。
これらのポイントを前もって整理しておけば、離婚後に「こんなはずじゃなかった」と後悔するリスクを減らせます。
性格の不一致による熟年離婚を円満に進める準備
離婚する意思が固まったら、スムーズに新生活を始めるために事前の準備を怠らないようにしましょう。
特に金銭面や手続き面での取り決めは、離婚後の生活を安定させるために重要です。
離婚そのものは役所に離婚届を提出すれば成立しますが、それだけでは大切な取り決めが宙に浮いてしまい、後から思わぬトラブルに発展しかねません。円満に協議離婚を成立させるため、以下の主な項目について離婚前に確認・用意しておくことをおすすめします。
財産分与の確認
長年の結婚生活で築いた財産は、基本的に夫婦の共有財産となります。預貯金、不動産、自動車、退職金、生命保険の解約返戻金など、どのように分けるかを明確に話し合いましょう。
特に専業主婦であった場合、自分名義の資産が少なくても、婚姻期間中に蓄えられた貯金や退職金の一部については受け取る権利があります。感情に流されて財産分与をおろそかにすると、離婚後の生活に支障が出るため注意が必要です。住宅ローンなど夫婦で共有している負債がある場合には、その扱いについても忘れずに取り決めておきましょう。
年金分割の手続き
熟年離婚では「年金分割」の制度を利用できる場合があります。これは2007年に始まった制度で、婚姻期間中に夫が納めた厚生年金保険料に対応する年金額を夫婦で分け合える仕組みです。
特に夫が会社員・公務員で妻が長年扶養に入っていたケースでは、年金分割により妻の将来受け取る年金額を増やすことができます。ただし、離婚成立後2年以内(法改正により今後、5年以内になる予定です。)に所定の手続きを行う必要があるため、忘れずに準備しましょう。また、年金分割は離婚すれば自動的に行われる制度ではなく、当事者が請求手続きをしなければ分割されない点に注意が必要です。
年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得し、相手方(配偶者)の基礎年金番号を添えて請求するといった流れになりますので、必要な書類の収集も早めに進めておくことが大切です。なお、夫が退職間近でまだ退職金を受け取っていない場合でも、その将来の退職金を離婚時に財産分与の対象とすることが認められるケースがあります。離婚するタイミングを決める際は、退職金の扱いも視野に入れておきましょう。
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住まいと生活設計の見直し
離婚後に住む場所や生活プランも重要な検討事項です。現在の住居が持ち家である場合は、どちらがその家に住み続けるのか、あるいは売却して代金を分けるのかを決めておきましょう。名義変更や住宅ローンの引き継ぎなど、専門的な手続きが必要な場合もあります。
賃貸住宅へ引っ越す場合は、新居探しや契約、引越費用の確保も考えておく必要があります。また、離婚後の収入と支出を見直し、年金収入や可能な範囲での就労による収入で無理なく生活できるかシミュレーションしておくと安心です。
必要に応じて、早めに就職活動を始めたり、公的な支援制度(例えばシニア向けの職業相談や地域のサポートサービス)について情報収集したりして、生活基盤を整えておきましょう。介護離婚といえども基本は通常の離婚と同様で、取り決めは明確に合意しておくことが重要です。特に金銭面や介護に関する認識のズレが残らないよう、丁寧に確認しておきましょう。
離婚協議書と公正証書のススメ:専門家に依頼するメリット
離婚時の大切な約束事は、口約束ではなく書面で残すことが肝心です。離婚後に「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、お互いが安心して新生活に専念できるよう、専門家の力を借りて正式な合意書類を作成しましょう。
離婚は当事者同士だけでも成立しますが、約束事項をきちんと書面化しておくことで後日の揉め事を防ぐ効果があります。ここでは、離婚協議書や公正証書を作成する意義とメリットについて説明します。
離婚協議書で取り決めを明文化
離婚時に夫婦間で合意した内容(財産分与、年金分割の方法、慰謝料や婚姻費用の清算、親権や養育費など子どもに関する事項がある場合はそれらも含む)を「離婚協議書」という書面にまとめます。
文章に残すことで双方が内容を再確認でき、後々の思い違いや勘違いを防ぐ効果があります。特に熟年離婚では金銭的な取り決めが複雑になりやすいため、口約束で済ませず合意内容をしっかり書類に残しておくことが大切です。
離婚届を提出するだけではこうした細かな条件は公的には記録されませんので、必ず協議書という形で取り決めを残しましょう。
公正証書にするメリット
作成した離婚協議書は、公証役場で公証人に認証してもらい、「離婚給付契約公正証書」という公的な書類にしておくとより安心です。公正証書化しておけば、約束された財産分与金や年金分割の履行が滞った場合に、直ちに強制執行(裁判を経ずに相手の財産を差し押さえて支払いや手続きを実行させること)が可能になります。
実際、公正証書を作成しておいたことで、元夫が支払いを渋った際にも迅速に差し押さえなど法的措置を講じられたケースもあります。また、公証人という法律の専門家が契約内容をチェックし、公正中立な立場で作成するため、書類としての信用力も高まります。
内容が明確になることで双方に緊張感が生まれ、「約束を守ろう」という意識付けにもつながりますし、お互い安心感を持って新たなスタートを切ることができるでしょう。
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離婚後でも離婚協議書を公正証書にできるのか?
離婚専門の行政書士に依頼する安心感
離婚協議書や公正証書の文案作成には法律の知識や適切な文言が求められます。専門家である行政書士に依頼すれば、漏れのない契約内容を盛り込み、法律上有効な書類を作成することが可能です。
夫婦それぞれの希望や事情を丁寧にヒアリングし、公証役場との調整まで含めて一括して任せることができます。多くの行政書士事務所であれば、お住まいの地域を問わずメールや電話、オンライン面談などで相談・依頼が可能です。
遠方に住む親族の署名が必要なケースなどでもスムーズに手続きを進められるため、「どこに相談したらいいかわからない」という方でも安心して利用できます。プロのサポートを受けることで精神的な負担も軽減され、落ち着いて熟年離婚後の新生活に踏み出すことができるでしょう。
このように、性格の不一致による熟年離婚は決して楽な決断ではありませんが、準備をしっかり行い納得のいく形で手続きを進めれば、人生の新たな章を前向きにスタートさせることができます。
経済的自立は決して簡単ではありませんが、公的制度の利用や周囲からのサポートも取り入れれば、きっと道は開けるはずです。お一人で悩まず、ぜひ専門家にも相談しながら進めてみてください。(当事務所では初回のご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。)
当事務所では離婚協議書や公正証書の作成サポートを全国対応で承っておりますので、ひとりで悩みを抱え込まずにぜひご相談ください。経験豊富な行政書士が親身になって対応し、あなたの新しいスタートを全力でサポートいたします。ご連絡をお待ちしております。
熟年離婚に伴う協議書や公正証書サポートはお任せください
長年連れ添った夫婦でも、性格の不一致や価値観のズレから、熟年離婚を決断される方が増えています。
しかし、離婚は人生の大きな節目となるため、将来の生活を安定させるためにも、事前の十分な準備と法的に有効な取り決めが必要です。
当事務所では、熟年離婚に伴う離婚協議書・公正証書作成のサポートを全国対応で承っております。経験豊富な行政書士が、ご事情に寄り添いながら適切なアドバイスと書面作成をお手伝いし、円満な新たなスタートを全力で支援いたします。
特に次のようなお悩みをお持ちの方はご相談ください。
- 長年の結婚生活で築いた預貯金・不動産・退職金の財産分与をどう取り決めたらよいかわからない
- 年金分割の手続きを忘れずに、確実に進めたい
- 退職金の分け方や将来の生活設計について不安がある
- 離婚後の住居・生活費・介護問題を含めた取り決めを明確にしておきたい
- 口約束では不安なので、後日のトラブル防止のため公正証書にしておきたい
- 遠方の親族との連絡調整や署名・押印の段取りを代わりに進めてほしい
- どこに相談してよいかわからず、一人で悩みを抱えている
ひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。当事務所では初回のご相談も承っております。あなたの「第二の人生」の新たな一歩を、確実に、安心して踏み出せるよう全力でサポートいたします。
サービスの特徴
きめ細やかな対応
ご依頼者様のご状況に合わせた、離婚協議書や公正証書を作成いたします。これまでに、ネット上のサンプルやテンプレートでは対応できないような難易度の高い離婚協議書や公正証書の作成も対応させていただいた実績があります。
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対面、電話、オンラインなど、お客様のご都合に合わせた相談方法をご用意しております。さらに、当事務所では離婚協議書の作成に加え、公正証書の作成も取り扱っております。公正証書の作成については、全国的に対応しています。
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離婚協議書作成の流れ
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まずは、電話や問い合わせフォームよりご連絡ください。お客様の状況をヒアリングし、離婚協議書作成の記載内容などをお伺いし、御見積やご準備いただく書類等をお伝えいたします。 - 契約締結
上記1によってご依頼いただいた内容で契約締結をします。お支払は契約締結後5日以内とさせていただいております。 - 協議書の草案作成
離婚協議書、公正証書いずれのご依頼であっても、まずは協議書の草案をPDF等のファイルでご確認いただきます。お送りする協議書の草案をご夫婦でご確認ください。 - 協議書の修正等
作成した草案の内容について必要に応じて変更や修正をいたします。その際に、不明点や疑問点があればお気軽にお申し付けください。 - 協議書の製本と郵送
確定いただいた協議書を当事務所で製本し、郵送させていただきます。なお、公正証書とする場合には公証役場にて手続をいたします。
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