熟年離婚（長年連れ添った夫婦の離婚）を検討し始めたとき、「何から始めればいいの？」と戸惑う方も多いでしょう。若い頃の離婚と比べ、財産や年金、住まいといった問題が複雑になる熟年離婚では、しっかりと手順を踏んで準備することが大切です。事前の準備を怠り感情のままに離婚してしまうと、離婚後に金銭面や生活面で苦労し、後悔する可能性があります。
本記事では、４０代以上の女性に向けて、後悔しない熟年離婚の進め方を解説します。また、熟年離婚は決して珍しいものではなく、近年その件数は増加傾向にあります。
慌てずに一つ一つ準備と手続きを踏めば、人生の再出発をより良い形で迎えることができるでしょう。離婚協議書や公正証書を作成するポイントや、行政書士によるサポートの必要性にも触れますので、ぜひ最後までご覧ください。
熟年離婚の仕方と流れ
離婚の仕方には、夫婦間の話し合いによる協議離婚、家庭裁判所での調停離婚、そして裁判離婚があります。日本では約９割以上の夫婦が協議離婚という形で離婚しています。熟年離婚でもまずは話し合いによる解決を目指し、それが難しければ調停へと進む流れが一般的です。熟年離婚でも基本的な進め方は同様ですので、まずは各方法の特徴を押さえておきましょう。
協議離婚（話し合いによる離婚）
夫婦間で離婚の合意が成立すれば、公的機関を介さず離婚が成立します。ただし、熟年離婚では財産分与や年金分割など取り決める項目が多く、口頭の約束だけでは後々トラブルになる可能性があります。離婚条件は必ず書面（離婚協議書）に残し、可能であれば公正証書化しておくと安心です。
調停離婚（家庭裁判所での話し合い）
夫婦だけでは合意できない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停委員（第三者）が仲介して話し合いを行い、離婚条件の合意を目指す手続きです。熟年離婚は婚姻期間が長いため条件が複雑になりがちで、実際に調停へ進むケースも少なくありません。
裁判離婚（裁判による離婚）
調停でも合意に至らない場合、裁判で離婚の可否を争うことになります。ただし、日本の法律では離婚したい理由が法律で定められた原因（不貞行為や悪意の遺棄など）に該当しなければ、裁判でも離婚は認められません。
例えば「性格の不一致」や「定年後のストレス」といった理由だけでは裁判離婚は難しいため、できる限り調停までで解決することが望ましいでしょう。（民法第７７０条）
第７７０条（裁判上の離婚）
１ 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
⑴配偶者に不貞な行為があったとき。
⑵配偶者から悪意で遺棄されたとき。
⑶配偶者の生死が３年以上明らかでないとき。
⑷その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
２ 裁判所は、前項第１号から第３号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
熟年離婚で後悔しないための事前準備
熟年離婚を成功させるためには、離婚前の事前準備が欠かせません。特に長年専業主婦だった女性にとって、離婚後の生活基盤を整えるための準備期間はとても重要です。金銭面や住居、必要な手続きなどを事前に把握し、計画を立てておくことで、離婚後のトラブルや後悔を防ぐことができます。
以下では、離婚前に行っておきたい具体的な準備事項を確認しましょう。
財産・収入の洗い出し
まずは夫婦の財産状況を正確に把握しましょう。預貯金や不動産、株式といった資産だけでなく、住宅ローンや借入金など負債も確認します。なお、財産分与の請求期限は離婚成立から２年以内と決められています。（令和７年５月現在）将来的には５年に延長される予定です。
話し合いが長引く場合も、この期限を念頭に置きつつ必ず解決するよう注意しましょう。特に退職金や年金分割については、将来の収入源となるため見落とせません。必要に応じて通帳のコピーを取るなど、証拠を残しておくと安心です。
離婚後の生活設計
離婚後に安定した生活を送るため、早めに生活設計を立てておきます。例えば、離婚後の収支シミュレーションを行い、いつから年金を受け取れるか、足りない分をどう補うか検討しましょう。
場合によっては就職活動や資格取得を離婚前に始めておくことも賢明です。自治体のシニア向け就労支援や、再就職支援セミナーなどを活用するのも一手です。
専門家への事前相談
離婚に踏み切る前に、離婚問題に詳しい専門家へ相談しておくと安心です。行政書士であれば、離婚協議書に盛り込むべき項目や公正証書化の流れについてアドバイスを受けられます。
弁護士であれば、調停や裁判に発展しそうなケースでの対応策を含め、総合的な法的助言を得ることができます。全国対応の行政書士ならメールや電話で相談できるので、地方に住んでいる方でも気軽に専門家の意見を聞けるでしょう。専門家に相談することで、離婚条件の見落としや不利な合意を避けることができます。
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離婚協議書と公正証書の作成ポイント
離婚条件の合意内容は必ず書面に残しましょう。書面化することで、お互いの認識違いや後からの言い逃れを防ぐことができます。ここでは、離婚協議書と公正証書それぞれの概要と作成時のポイントを説明します。
離婚協議書の役割
離婚協議書とは、夫婦が合意した離婚条件を書面化したものです。親権、財産分与、年金分割、慰謝料など、離婚に関する取り決め事項を一通り網羅します。
離婚届にはこうした詳細を記載できないため、協議書を別途用意する意義は大きいです。特に金銭の取り決めについては、口約束では支払いがなされないリスクがあるため、必ず文書に残しておきましょう。
なお、離婚協議書に記載すべき主な項目には、離婚の合意、財産分与（どの財産を誰にいくら渡すか）、年金分割（実施時期・按分割合）、慰謝料（有無・金額・支払いの仕方）、子供がいる場合は親権者や養育費・面会交流の取り決めなどがあります。
公正証書にするメリット
合意内容に基づいて離婚協議書を作成したら、公正証書にしておくことを強くおすすめします。公正証書とは公証役場で公証人に作成してもらう公文書で、私文書よりも高い証明力を持ちます。
特に金銭が絡む取り決めについては、強制執行認諾条項付きの公正証書にしておくことで、相手が支払いを怠った際に裁判手続きを経ず財産差押えが可能になります。一方、公正証書にしない場合は、万一支払いが滞った際に改めて裁判で請求しなければならず、余計な負担がかかります。また、公正証書の原本は公証役場で保管されるため、紛失や書き換えのリスクもなく安心です。
行政書士による書類作成サポート
離婚協議書や公正証書の作成は専門知識が要求されます。漏れなく適切な内容で書面を作るためにも、行政書士など専門家のサポートを活用しましょう。行政書士は夫婦の合意内容をヒアリングし、法律用語を盛り込みつつ当事者に分かりやすい離婚協議書を作成してくれます。
また、公証役場との調整も代行可能なので、スムーズに公正証書を作成できます。専門家に依頼することで手続きの手間も省け、精神的な負担も軽減するでしょう。
離婚後にやるべき手続きと新生活の準備
離婚が成立した後も、忘れずに行うべき手続きや、生活を立て直すための準備があります。離婚成立後、「終わった」と安堵しがちですが、そこからが新生活のスタートです。最後に、離婚後の主な手続きと、新生活を円滑に始めるためのポイントを確認しましょう。
役所での諸手続き
運転免許証やマイナンバーカードなど身分証の姓や住所変更、健康保険の変更（夫の扶養から外れる場合）、年金分割の請求手続き（離婚後２年以内）など、公的手続きを順次済ませましょう。また、年金分割の手続は令和７年５月現在は離婚後２年ですが、将来的には５年に延長される予定です。
住まいの確保
離婚後の住居が決まっていない場合は、早急に住む場所を確保する必要があります。実家に戻れるなら検討し、難しい場合は公営住宅やＵＲ賃貸住宅への申込みも視野に入れましょう。
なお、離婚前に持ち家がある場合は、住宅ローンの名義変更や売却による清算が必要になることもあります。収入に不安がある場合、市区町村の住宅相談窓口で支援策を問い合わせるのも有効です。新居が決まるまでの間はウィークリーマンションやシェアハウスを一時利用する方法もあります。
心機一転、新生活への心構え
離婚後は環境が大きく変わりますが、新たな人生を前向きに歩む心構えも大切です。しばらくは慣れないことも多いでしょうが、自分一人で抱え込まず周囲に助けを求めてください。
友人や家族、場合によっては自治体の相談窓口やカウンセリングなども活用し、不安や悩みを吐き出しましょう。また、新しい趣味を始めたり地域のコミュニティに参加したりして、積極的に気分転換を図ることも有効です。行政書士など専門家との付き合いも離婚後まで続けることで、各種手続きのフォローや困ったときの相談先となり心強いはずです。
離婚はゴールではなく、新しい人生へのスタートです。しっかりと準備と手続きを行い、周囲のサポートも得ながら進めれば、きっと明るい未来への道が開けるでしょう。熟年離婚に関する不安があれば、全国対応の行政書士に相談し、安心できる離婚手続きを実現してください。
熟年離婚による離婚協議書の作成はお任せください
当事務所では、熟年離婚を検討されている方に向けて、離婚協議書や公正証書の作成を専門的にサポートしております。長年連れ添った関係を円満に終えるためには、財産や年金、生活面の不安をしっかりと取り決めたうえで、将来のトラブルを予防することが何より重要です。
特に次のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
- 財産分与や年金分割の条件を正確に文書化しておきたい
- 離婚後に養育費や慰謝料の未払いが起きないように備えたい
- 退職金や住宅ローンなど複雑な財産について不安がある
- 離婚協議書を作成したいが、どこから手をつければよいか分からない
- 公証役場とのやり取りや手続きを任せたい
- 地方在住のため、電話・メールで対応できる専門家に相談したい
当事務所では、ご夫婦の合意内容をもとに、法的に有効な離婚協議書を作成し、公正証書化まで一括してサポートいたします。全国対応・土日祝のご相談も可能です。人生の大きな転機を安心して迎えられるよう、丁寧かつ誠実に対応させていただきます。
サービスの特徴
きめ細やかな対応
ご依頼者様のご状況に合わせた、離婚協議書や公正証書を作成いたします。これまでに、ネット上のサンプルやテンプレートでは対応できないような難易度の高い離婚協議書や公正証書の作成も対応させていただいた実績があります。
柔軟な相談や業務の対応
対面、電話、オンラインなど、お客様のご都合に合わせた相談方法をご用意しております。さらに、当事務所では離婚協議書の作成に加え、公正証書の作成も取り扱っております。公正証書の作成については、全国的に対応しています。
明確な料金体系
事前にお客様のご状況をヒアリングした上で、サービス内容と料金の詳細をお伝えしますので、料金体系は明瞭にさせていただいております。
全国対応
当事務所は大阪市に事務所がありますが、離婚協議書や公正証書の作成については、大阪府、兵庫県、奈良県を中心に全国からご依頼を承っております。これまでに、東京都や神奈川県、広島県、沖縄県など幅広くご依頼を承ってまいりました。
離婚協議書作成の流れ
- 初回相談
まずは、電話や問い合わせフォームよりご連絡ください。お客様の状況をヒアリングし、離婚協議書作成の記載内容などをお伺いし、御見積やご準備いただく書類等をお伝えいたします。 - 契約締結
上記１によってご依頼いただいた内容で契約締結をします。お支払は契約締結後５日以内とさせていただいております。 - 協議書の草案作成
離婚協議書、公正証書いずれのご依頼であっても、まずは協議書の草案をPDF等のファイルでご確認いただきます。お送りする協議書の草案をご夫婦でご確認ください。 - 協議書の修正等
作成した草案の内容について必要に応じて変更や修正をいたします。その際に、不明点や疑問点があればお気軽にお申し付けください。 - 協議書の製本と郵送
確定いただいた協議書を当事務所で製本し、郵送させていただきます。なお、公正証書とする場合には公証役場にて手続をいたします。
料金
| サービス | 料金 | 概要 |
| ⑴離婚協議書の作成と製本 | 44,000円 | 離婚協議書を作成し、製本までを対応させていただきます。 |
| ⑵離婚公正証書の作成サポート （上記⑴を含みます。） | 77,000円～ | 離婚公正証書の作成をサポートさせていただきます。代理調印が必要かなのかどうかで費用が異なります。 |
※）上記金額に実費がかかります。
当事務所にお任せいただくメリット
- 安心と安全をご提供します
法的知識と豊富な経験に基づいた、安全で信頼性の高い協議書を作成いたします。 - 時間の節約
煩雑な離婚協議書の作成を当事務所にご依頼いただくことで、お客様の貴重な時間を節約できます。 - トラブル予防
将来起こり得るトラブルを第三者からの視点で予測し、それを防ぐための条項を検討させていただきます。 - 専門的アドバイス
離婚に関する法的な疑問や離婚後の手続なども専門家の立場からアドバイスいたします。
お問い合わせ
離婚協議書の作成について、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。経験豊富な行政書士が、お客様の状況に寄り添いながら、最適な離婚協議書や公正証書の作成をサポートいたします。
お客様の声
お客様からいただいたお声の一部はこちらをご確認ください。
【政府の記事】
日本年金機構「離婚時の年金分割」
法務省「年金分割」
法務省「離婚を考えている方へ～離婚をするときに考えておくべきこと～」
厚生労働省「令和４年度 離婚に関する統計の概況」
熟年離婚の仕方完全ガイド－よくある質問
Ｑ１．熟年離婚でも慰謝料はもらえますか？
Ａ．慰謝料は離婚原因によります。たとえば夫の不貞行為（浮気）や暴力が離婚原因の場合、妻は夫や浮気相手に慰謝料を請求できる可能性があります。ただし性格の不一致など法定離婚事由に当てはまらない場合、慰謝料は難しいでしょう。
Ｑ２．離婚後の年金分割は必ずしなければならないのですか？
Ａ．年金分割は夫婦の合意で決める事項ですが、多くの場合妻の将来の生活を支えるために実施されます。とくに専業主婦で厚生年金の加入実績がない場合、年金分割によって自分の年金額が増えるメリットが大きいです。離婚後２年以内（令和７年５月現在）に所定の手続きを行えば、最大で結婚期間中の厚生年金の半分を受け取れます。
Ｑ３．離婚協議書や公正証書は自分で作成できますか？
Ａ．自分で作成することも可能ですが、内容に不備があれば効力が十分でない恐れがあります。専門用語や法律的な表現も多いため、行政書士など専門家に依頼する方が安心です。
専門家に依頼すれば、夫婦の合意内容を漏れなく盛り込んだ文書を作成してもらえますし、公証役場での公正証書作成もスムーズに進みます。費用はかかりますが、後々のトラブル防止というメリットを考えれば検討する価値は高いでしょう。
Ｑ４．離婚後、名字（姓）はどうなりますか？
Ａ．婚姻によって夫の姓に変えていた場合、離婚により妻は原則として旧姓（婚姻前の姓）に戻ります。ただし、離婚の日から３ヶ月以内に「婚氏続称」の届出をすれば、離婚後も婚姻中の姓を名乗り続けることが可能です。
実際、近年では離婚後も姓を変えない人が４割以上いるという調査結果もあります。姓を変えるかどうかは、社会生活への影響や子どもの名字などを考慮して決めるとよいでしょう。
Ｑ５．熟年離婚は成立までにどれくらい時間がかかりますか？
Ａ．ケースによります。協議離婚でお互いの合意がすぐにまとまれば、離婚届を提出するだけなので短期間で成立します。早ければ話し合い開始から数週間～数ヶ月程度で離婚できるでしょう。
一方、調停に進んだ場合は平均で半年から１年程度かかることもあります。裁判まで争うとなると１年以上要するケースも珍しくありません。財産分与や年金分割の手続きも含め、余裕を持って計画するとよいでしょう。
Ｑ６．夫の退職金は財産分与の対象になりますか？
Ａ．はい、婚姻期間中に夫が勤務して得た退職金相当額は財産分与の対象になります。退職金がまだ支給されていなくても、将来得られる見込み額を算出して離婚時に清算することが一般的です。
熟年離婚では退職金を含めた財産分与が大きな問題となる傾向があります。話し合いで合意が難しい場合は、弁護士等に相談して適正な評価額を算出してもらうとよいでしょう。
Ｑ７．熟年離婚にかかる費用はどれくらいですか？
Ａ．協議離婚そのものに役所への手数料はかかりません。ただし、離婚協議書を公正証書にする場合、公証役場での手数料が発生します（契約内容によりますが約５万～７万円程度）。
また、専門家へ依頼する費用も考慮が必要です。行政書士に離婚協議書作成を依頼する場合は内容にもよりますが５万円程度、それに対して弁護士に交渉や調停を依頼すると着手金や報酬で２０、３０万円かかることもあります。
調停申立て自体の費用（収入印紙代や郵便切手代）は数千円程度と大きくありませんが、長引くほど交通費や日当など負担が増えるでしょう。総じて、離婚公正証書の作成費用や専門家報酬は、将来の安心を買うための必要経費と考えるとよいかもしれません。
Ｑ８．離婚するかどうか迷っています。どう決断すればよいでしょう？
Ａ．熟年離婚は人生の大きな決断ですから、迷うのは当然です。すぐに結論を出す必要はありません。一度きりの人生ですので、自分が今後どう生きたいか、経済的に自立できるか、離婚によるメリット・デメリットを紙に書き出すなどして整理してみましょう。
信頼できる友人や家族に気持ちを打ち明けて意見を聞くことも有益です。また、離婚問題に詳しいカウンセラーや専門家に相談し、第三者の視点からアドバイスをもらうことで、気持ちが整理されることもあります。最後はご自身の心が納得できる選択をすることが大切です。
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